イジワル副社長と秘密のロマンス
爆発しそうなくらいの脈動を感じながら、彼の方へぎこちなく体を向ける。
大きくて黒目がちな瞳にすぐにとらえられ、わずかに唇が震えた。
言葉を発しようとした私を制するように、彼の瞳が生意気そうな輝きを放った。
「俺のこと、覚えてる?」
一時だって忘れることなどできなかった。
とっさに心に浮かんだ言葉は、喉元で一時停止する。
彼女の目の前でそんな告白めいた台詞を言えるわけがない。
それ以前に、十年もの間ずっと気にし続けていたなんて、悔しくて、恥ずかしくて、言いたくない。
頭一個分高い位置から、樹君が威圧的な眼差しを私に突きさしてくる。
睨まれていると思ったけれど、すぐに違うと考え直した。
表情や態度が少々高圧的に見えるけれど、そこに相手を委縮させようとか、優位に立とうとか、攻撃の意志などない。
彼はただ私の答えを待っているだけなのである。
――……そう。樹君は昔からそうなのだ。
「北ヶ原の丘の上にある大きな家で一緒に遊んだ樹君……だよね?」
懐かしさに涙が出そうになるのをなんとか堪えながらも、私なりの平常を装って言葉を返すと、すぐそばにある口元がにやりと笑った。
「ご名答」