イジワル副社長と秘密のロマンス
「冷血ってよく言われるから。俺は千花を怖がらせたくないのに……自分自身が一番怖がらせてたらと思うと」
そっと、肩に乗せていた手が、私の頬に添えられた。
大切なものを戸惑いながら触れているかのような手つきがくすぐったくて、私はその手に自分の手を重ねた。
彼の手の平の温もりを感じ取りたくて、その手に頬を摺り寄せる。
「怖いと思う時もあるかもしれない。でもそれ以上に、私は樹君が傍にいてくれるとすごく心強いです。今だって、ありがとう。私ひとりだったらきっと、かわしきれなかった。樹君、ありがとう」
彼の温かさに気持ちを添わせるように、そっと瞳を閉じた時、額に柔らかいものが触れた。
驚き目を開けると、すぐそばには樹君の顔があった。
額にキスされたんだと理解すれば、急に恥ずかしくなってくる。ここは歩道。もちろん人の目がある。
「覚悟しておいて」
「覚悟?」
「俺は千花を簡単には手放さない」
見つめる先にあるのは、澄んだ瞳。
余計な色は一切含んでいない彼の気持ちが、言葉となって、私の中にまっすぐ入ってくる。
「千花は誰にも渡さない」