イジワル副社長と秘密のロマンス

「俺も好き。自分でも呆れるくらい千花が好き」


樹君と今夜の食事場所に選んだのは、タワーの上層階にある展望レストラン。

眼下に広がる煌びやかな都会の夜景にひとり歓声を上げ、高級な食材がふんだんに使われたイタリア料理がテーブルに並べられるたびうっとりとため息をつき、一匙一匙、口に運ぶたび、何度も喜びの声を上げる。

そんな私を見つめる樹君の表情は、呆れかえっているようにも見えるけれど、そうじゃない。

眼差しは温かい。彼の優しさが伝わってくるから、照れを感じてしまう。

今目の前にいるのは、副社長としての樹君じゃなくて、彼氏としての樹君。

樹君のカリスマ性に幾度となくハッとさせられる仕事時間も新鮮であり、とっても貴重だと感じるけれど、お互い力を抜いて向き合っていられるこの穏やかでのんびりした時間も大切だと、改めて実感させられる。

つまりこうして、樹君とたくさんの時間を共にできている私は、幸せ者である。





「そう言えば、さっきのことだけど」


シャンパングラスを静かにテーブルに置き、樹君が思い出したかのように切りだしてきた。


「さっき?」


口元に笑みを浮かべ、彼にぼんやり見惚れたまま、私は“さっき”を予想する。


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