イジワル副社長と秘密のロマンス
彼に対しては、いつか社長が樹君に言っていた言葉が、しっくりくる。
“AquaNextに次期副社長っていう身分をちらつかせれば、女はいくらでも寄ってくる”
あの言葉のように、御曹司とかそんな身分をちらつかせて、たくさんの女性とお付き合いしてきたかのような、そんな自由奔放さを感じてしまったのだ。
もちろんそれらは私の勝手な想像である。余計なことは口にしない。
「もしかしたら、そのうちあいつと仕事で顔を合わせることも、あるかもしれない」
「そうなの?」
「可能性の話だけどね」
やっぱりどこかのお偉いさんなんだろうなと、一人納得していると、二つ先のテーブルから、女性の嬉しそうな声が響いてきた。
見れば、女性が男性に花束をプレゼントされ、嬉しそうに頬を赤く染めている。
幸せそうなオーラにあてられ、笑みを浮かべていると、樹君が切なげに囁いた。
「花束か……久々のデートなんだから、俺もそれくらい用意すべきだったかも」
「えっ!? そんなことないよ。こうして一緒にご飯を食べられることが、私には最高のプレゼントなんだから」
「ふうん。じゃあ、俺からのプレゼントは今後も必要ないわけね」
「……えっ」