イジワル副社長と秘密のロマンス
改めて彼の意図するところを想像すれば、恥ずかしく顔が熱くなってしまうけれど、彼の言葉を聞いて膨らんだ思いはそれだけではなかった。
密かに心の奥底で持ち続けていた気持ちが、強くなっていく。
彼に誘われたあの夜からずっと、“いつかきっと、樹君と”と思い続けていたのだ。
初めて一夜を共にする相手は、樹君以外考えられない。樹君が良い。
覚悟なら……もうとっくにできている。
私はこくりと、彼に向かって首を縦に振った。
+ + +
お店を出て、タクシーに乗り込み、向かった先にあったのは、超高層マンションだった。
樹君に手を引かれながら、そびえ立つそれを仰ぎ見た。何階建てなのだろうか。見当がつかない。
「……高い」
「47階あるからね」
「……ち、なみに、樹君は何階に住んでるの?」
「38階」
「……す、すごい」
階数は見当がつかなかったけれど、家賃が高いだろうという予想はつく。
そして、樹君はなんてことない様子で、さらりと答えてくれたけれど、一般人が気軽に住める場所でもないだろうことも分かる。さすが副社長である。
樹君のあとに続いてマンション内に足を踏み入れるとすぐに、口が半開きになった。