イジワル副社長と秘密のロマンス

改めて彼の意図するところを想像すれば、恥ずかしく顔が熱くなってしまうけれど、彼の言葉を聞いて膨らんだ思いはそれだけではなかった。

密かに心の奥底で持ち続けていた気持ちが、強くなっていく。

彼に誘われたあの夜からずっと、“いつかきっと、樹君と”と思い続けていたのだ。

初めて一夜を共にする相手は、樹君以外考えられない。樹君が良い。

覚悟なら……もうとっくにできている。

私はこくりと、彼に向かって首を縦に振った。



+ + +



お店を出て、タクシーに乗り込み、向かった先にあったのは、超高層マンションだった。

樹君に手を引かれながら、そびえ立つそれを仰ぎ見た。何階建てなのだろうか。見当がつかない。


「……高い」

「47階あるからね」

「……ち、なみに、樹君は何階に住んでるの?」

「38階」

「……す、すごい」


階数は見当がつかなかったけれど、家賃が高いだろうという予想はつく。

そして、樹君はなんてことない様子で、さらりと答えてくれたけれど、一般人が気軽に住める場所でもないだろうことも分かる。さすが副社長である。

樹君のあとに続いてマンション内に足を踏み入れるとすぐに、口が半開きになった。


< 147 / 371 >

この作品をシェア

pagetop