イジワル副社長と秘密のロマンス
熱い頬
「遅かったですね!」
「……はぁ。すみません」
私はレストラン内に戻り、袴田さんの前の椅子に腰かけた。
「あの……孝介先輩は?」
長方形の四人掛けのテーブルに、私と椿、孝介先輩と袴田さんが向き合う形で座っていたのだけれど、今、袴田さんの隣に孝介先輩の姿が無いのだ。
私の問いかけに、袴田さんがにっこりと笑った。
「仕事の電話がかかってきて、店の外で話してくるって出て行きました。廊下で会いませんでしたか?」
私は「いえ」と首を振りながら、レストラン入口へと目を向けてしまう。
そこには孝介先輩の姿も椿の姿もなく、代わりにスタッフと話す女性の姿があった。
女性は、樹君と共にやってきた女性だ。彼女の後ろには樹君もいて、二人の男性に挟まれる格好で立っている。
その光景を見つめながら、私はぼんやりと、先ほどのやりとりを思い返した。
+ + +
「ちょっと、樹っ!」
すらりとしたあの綺麗な女性が、自分と樹君の間に割って入ってきたことで、私は一気に現実へと引き戻された。
そして私から引き離すかの様に、彼女が樹君の腕にするりと細い腕を絡めた。