イジワル副社長と秘密のロマンス
おまけにジロリと睨みつけられた。
彼女はサングラスを外していた。露わにされた派手な顔立ちに、私は思わず怯んでしまう。
きりっとした印象を与える眉、しっかりと施されたアイメイクに負けないくらいの大きくて力強さを感じさせる瞳。その全てから意志の強さが伝わってくる。
ほどよい肉感のある唇は色気があり。白い肌はきめが細かい。胸もあるし、ウエストは細いし、足も長いし、モデルみたいだ。
そこまで考えて、私はちょっぴり首を傾げた。
彼女のことを何かの雑誌ですでに見ているような、そんな既視感を覚えたのだ。
その小さな顔を見つめていると、遠くから近づいてきていた男性の談笑する声が、すぐ後ろでぴたりと止まった。
「あれ? どうかしたの?」
振り返れば、五十代だろう白髪交じりの男性と、眼鏡をかけた三十才くらいの若い男性が並んで立っていた。
「樹?」
落ち着いたトーンで若い男性が樹君に再び問いかけた。
けど樹君は答える気がないらしい。あらぬ方向へと顔を向けてしまう。
若い男性の視線が、女性を経由したのち私で停止する。
彼は指先で眼鏡を押し上げた後、何かありましたかというように微かに笑って見せた。