イジワル副社長と秘密のロマンス

つま先立ちになると同時に、唇と唇が重なりあった。

唇を重ね合わせるたびに、身体が熱くなっていく。

高ぶる気持ちのまま口づけも深くなり、彼とのキスにのめりこんでいく。


「……はあっ……」


唇が離れ、私は息を吐く。

甘ったるく響いた自分の息遣いに、恥ずかしくなる。こんな吐息を漏らす自分を、私は知らない。

無言のまま見つめ合っていると、樹君が視線を伏せた。

彼が軽い力で私の腰元を引き寄せた。そのまますり寄るように、私の首元に彼が顔を埋める。

背中まで上昇してきた大きな手に、力が込められる。力強く抱き締められているけれど、息苦しくはない。


「千花」


名を呼ばれただけで、心を掴まれる。低く囁きかけられた声は、甘くて、優しくて、艶めいてもいる。

彼のまだ少し湿っている柔らかな髪に、自分の頬をくっつけた。


「樹君」


胸いっぱいに広がっていく幸福感に笑みを浮かべながら、私も彼の名を呼び返した。

首元から顔を上げた樹君と、視線が繋がる。私を見つめたまま、彼が口元に笑みを浮かべた。

いつもなら見せない……私だけにしか向けないだろうその綺麗な微笑みに、また心が震える。胸が高鳴っていく。


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