イジワル副社長と秘密のロマンス
自分は樹君の温もりに包まれ、幸せな気分のまま眠りに落ちてしまったから、なんだか申し訳ない気分になってしまう。
思わず身体を起こそうとしたら、樹君の手がそっと私の肩を掴んだ。そのまま優しい力でベッドに押し戻される。
「冗談だから。単に寝るのが勿体なかっただけ」
「勿体ない?」
「そう。俺は寝てる千花を眺めていたい」
それも冗談でしょと言い返したくなったけど、言葉が喉元で止まってしまった。
見降ろしてくる瞳も、髪を撫でる手つきも、とっても優しい。
本気で言ってくれているのかもと考えてしまえば、途端に頬が熱くなってくる。
「だから、寝て。さっさと寝て。俺の癒しの時間を奪わないで」
「えっ!? わあっ、ちょっと待ってよ!」
優しかったはずの彼の手が、突然、私の視界を覆い隠した。両目を隠され、私は慌ててその手を掴みにかかった。
「お陰様で、目が覚めちゃいました! さっさと寝てって言われても、そう簡単に眠れませんっ!」
なんとか手を振り解き、文句をつけると、樹君がにやりと笑った。
「あっ、そう。眠れないんだ。俺も眠れないし、気が合うじゃん。だったら、もう一回いけるよね」
彼の言わんとしていることを理解するのに、たっぷり五秒かかってしまった。
「待って! 眠れます! 速攻で眠れ……んんっ!」
言い終わるよりも前に、樹君が私に覆いかぶさってきた。唇を重ねられてしまえば、私はもう黙るしかない。
「朝まで俺に抱かれてて」
耳元でねだるように囁かれ、鎮まっていた身体が反応してしまう。
熱を帯びた眼差しに、抗う気持ちがかき消されていく。
彼の首に手をかけ、そっと引き寄せた。
軽く自分の唇を押し当てれば、彼が色っぽく瞳を細めた。
本能のままに、身体を熱くさせていく。繰り返された口づけに、吐息が混ざり合った。
幸せな夜は、まだまだ終わらない。