イジワル副社長と秘密のロマンス

車に戻り、運転席に乗り込む前に、テンションが高いまま、そんなことまで言ってきた。

兄の不要な情報を聞かされ、思いっきり顔をしかめた俺を見ると、ついでのようにもう一言追加させてきた。


「ほんと弟(お前)が可愛くて仕方ないんだな」


身軽なはずなのに、気持ちが重くなっていく。


「……鬱陶しい」


鬱憤を吐き出すように、俺はその場で盛大にため息をついた。


+ + +


俺の小学生最後の夏休みは、淀みなく流れていく。

昴じいさんと会うのは東京でが主だったから、これまで家を訪ねたことはなかった。

慣れない場所で生活をすることにはなったけれど、特に戸惑う事態は起きていない。

空いている部屋を俺にあてがってくれて、誰の目も気にしないで済むプライベートな空間も持てているしで、想像以上に平穏な日々が続いている。

のんびり進めている宿題の手を止めて、俺は両手を伸ばした。


「快適」


窓は開いてる。今日は部屋の中に吹き込んでくる風が心地よくて、俺はまだクーラーをつけずにいる。

昴じいさんが住むこの家は林に囲まれているせいか、鳥の声とか、風が吹けば木々の葉の擦れる音とかがうるさいくらい聞こえてくる。


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