イジワル副社長と秘密のロマンス
身体を重ねることもあれば、ただ寄り添って眠るときもあり、私にはどちらも幸せで大切な時間なのである。
また樹くんがあくびをした。
「眠そうだね」
小声で話しかけると、樹君がデスクの縁に腰をかけた状態で、片手を伸ばしてきた。
「千花。来て」
低く響いた声音の中に、わずかに甘えも含まれているように聞こえ、思わずどきりとしてしまう。
「……どっ、どうしたの?」
誰もいないと分かっているのに、私は室内をキョロキョロしながら樹くんに歩み寄っていく。
彼の前に立つと同時に、そっと引き寄せられた。
優しい腕の中に閉じ込められ、気恥ずかしさで身動き出来ずにいると、きゅっと、抱きしめられた。
すり寄るように、首元に顔を埋めてくる。伝わってくる彼の温度が、無駄に私の鼓動を上げていく。
「最近、眠れないんだよね」
彼からの突然の相談ごとに、ハッとさせられる。身を捩って、私は彼の顔を覗き込んだ。
「大丈夫?」
涼し気な顔でどんどん仕事をこなしていくから、思い至らなかったけれど、彼は激務をこなしているのだ。
しかも私には想像つかないくらいのプレッシャーも感じているはずだから、疲労感は半端ないだろう。