イジワル副社長と秘密のロマンス
それらがストレスとなって、不眠を引き起こしているのかもしれない。
こういう時こそ秘書として、そして彼女としても、彼の役に立ちたいのだけれど……私はベッドに入ると朝まで爆睡できてしまうタイプなので、いい解決方法が思いつかない。
「ええっと……あっ! 枕を新しくするのはどうでしょう? 自分に合うように作ってもらったりとか」
「要らない。原因は、枕が合わないからとか、そういうことじゃないから」
苦し紛れの提案は、すぐに樹君により却下されてしまった。
「最近、来てくれないから、ぐっすり眠れないんだけど」
私を覗きこんできた瞳が、“どうしてくれるの?”と訴えかけてくる。思わず身をのけ反らせてしまった。
「来てくれないって……えーと、それって……」
「千花が、に決まってるでしょ?」
まさかそんなことを言われるなんて思いもしなかった。私は彼と視線を合わせたまま瞬きを繰り返す。
実は、樹君が抱えている大きなプロジェクトが一段落つくまで、彼の家に頻繁に遊びに行くのを控えようと思い、最近、それを密かに実行に移していたのだ。
家を訪ねる回数をあからさまにではなく“密か”に減らしていたつもりだったのだけれど、彼はそれを鋭く感じ取っていたらしい。さすが樹君である。