イジワル副社長と秘密のロマンス
今朝、二人は目線だけで何らかの意思疎通をしていたように、私には見えた。そのことが今までずっと心の隅っこに引っかかっていたのだ。
樹君は目を大きくさせて、私を見ている。驚いている。
「デートに誘われたり、告白めいた言葉を言われたことはあるけど」
今度は私が驚く番だった。私は会社では樹君とほとんど一緒にいるというのに、そんな現場を目の当たりにしたことはない。
「……それって、いつ?」
「昼休みとか、仕事が終わって兄さんと話してるときとか」
言われて気付かされる。
昼休みの間は樹君から離れて食事をとっていることもあるし、もう帰っていいよと言われると、樹君より先に会社を出てしまう。
その間の彼は知らない。
星森さんが樹君に好意を持っているだろうことはなんとなく気付いていたし、積極的なタイプだと感じていたことも事実なのに、いざこうして実際の出来事として聞かされてしまうとショックである。
「不安になることも落ち込む必要もないから。俺、興味ないから」
あまりにもさらりと言われてしまい、私は苦笑いする。
言われた途端、彼が女性を袖にする光景が目に浮かんできてしまうから、不思議である。