イジワル副社長と秘密のロマンス
「あっ!」
中身が見えた瞬間、私は叫んでいた。両手で取り出しながら、歓喜の声を上げてしまう。
「完成したんだね!」
私の言葉に樹君が頷き返してきた。
彼がくれたのは、黒ネコと白ウサギの、あのぬいぐるみである。
「目いっぱい詰め込まなくても良かったのに」
ついつい笑顔になってしまう。
樹君の家で見た時は普通だったのに、今私の手の中にいる黒ネコの身体は、綿がめいっぱい詰め込まれていて、一回り太くなってしまっている。硬いくらいだ。
なぜこんな体型にという疑問は浮かぶけど、これはこれでとっても愛くるしい。
黒ネコはちょっぴり変わってしまったけれど、二体の手と手は繋がったままだった。
しっかりくっ付いている手を指先でなぞれば、幸福感で心が満たされていく。
彼の心遣いにすっかり励まされてしまった。余計な感情などすっかり消え去り、とっても幸せである。
「大切にしてよね」
「もちろん、宝物だよ! 有難う、樹君! 嬉しい!」
「それ、言葉だけじゃなくて、態度でも表してもらいたいんだけど」
「え?」
態度で表せとの要求に、私は両手でぬいぐるみたちを抱きしめたまま、考える。