イジワル副社長と秘密のロマンス


「見慣れてますか? 三枝さんはモデルも多く来店しそうなお店に勤めてらっしゃいますよね」


初めて自分のことを聞かれ、ドキリとしてしまった。


「……た、確かに、芸能関係の方も多く来店されますけど、だからと言って、見慣れているというわけでは」

「僕はアパレルのことはよく分かりませんが、それでも、都心の一等地であの規模の店を構えているのはすごいことだと分かります。それなりのステータスがありそうな客ばかりが来店していますよね」


ぶつぶつと呟かれる言葉を聞きながら、この人は私のことをどこまで知ってるのだろうと、うすら寒くなってくる。

私が勤めているのは、アパレル系のお店である。

メンズ、レディースはもちろんのこと、私の配属先のショップでは子供服まで揃っている。

バッグ、靴、財布、ファッション小物やジュエリーも取り扱っていて、ハッキリ言って、値段もお高いものばかりである。

袴田さんの言う通りなのである。


「私の仕事のこと、椿に聞きましたか?」


東京で私が仕事をしていることくらいは、椿から聞いていると思う。

けれど、今さっきの袴田さんは、まるで私の職場を見てきたかのような言い方だった。


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