イジワル副社長と秘密のロマンス
思い過ごしてあってほしいと強く思った時、袴田さんが鼻で笑った。
「えぇ、はい。横川さんには三枝さんのことをいろいろ聞きました。それに自分でも店の前まで何度も足を運びました。あなたが生き生きと接客する姿も何度も見ています」
「えっ!?……そ、そうだったんですか」
「僕は思いました。三枝さんは、はかまだの制服の方が絶対似合います。一度、着てみてくれませんか? 絶対似会うと思うんです。今度の正月はこちらに帰省されますか? そのご予定なら、ぜひもう一度、僕と会って下さい。その時にぜひ、制服を着たところを僕に見せていただけないでしょうか? あぁ、楽しみです」
突っ込む隙を与えないほど口早に、彼が言葉を並べていく。
予期せぬ方向へと話が進み始めたことに、頬がぴくぴくと引きつってしまう。
私は静かに椅子から立ち上がった。
「孝介先輩も椿も遅いですね。どうしたんでしょうね……ちょっと入口のあたり見てきます。そのあと、デザートにケーキをもらってきます」
興奮し赤みを帯びていた袴田さんの顔が、すっと白んでいく。和菓子屋の息子にケーキというワードはダメだったようだ。