イジワル副社長と秘密のロマンス
「間違ってはないかもね。確かに、気付くと近くにいたし……でもその程度だから」
私の腰に触れていた樹君の手に、軽く力が込められる。彼の存在をより近くに感じた。
「俺のこと可愛いって思ったことある?」
「……可愛い? 樹が?」
「彼女にはついさっきそんなこと言われたんだけど」
樹君がニヤリと笑うと、津口さんは口元を強張らせた。
「俺だって可愛い思えば可愛いって言うし、好きだと思えば好きって言うし。他の男が触れれば馬鹿みたいに嫉妬もするし。四六時中、俺の傍にいればいいのにって思ってるし。彼女が笑顔になってくれそうなことなら、なんだってするし。離したくないから必死にもなるし。余裕ないし」
一つ息を吐き出してから、彼が再び口を開く。
「……で? 津口は俺こと、本当によく知ってるの?」
樹君の鋭い視線に津口さんがたじろいだ。周囲は賑やかなのに、この場だけ凍りついた気がした。
彼の視線が移動する。停止した先に立っていたのは白濱副社長。樹君と目が合い、嫌そうに身を引いた。
「あぁ、そうだ千花。白濱副社長が知りたいみたいだから、聞かせてあげなよ」
突然の提案に首を傾げた瞬間、樹君が小悪魔的な笑みを浮かべた。嫌な予感がする。