イジワル副社長と秘密のロマンス
とは言っても、私のことをいろいろ聞いてくるので、それに答え続けただけである。
なのだけれど……仕事の話は一切しなくなり、ただ私と話しているだけの状態になってしまうと、樹君の目が徐々に怖くなっていく。
そのことに、ちょっぴり楽しそうな顔をした白濱副社長も、やっぱり曲者である。
樹君が文句を言い始めたとき、吉原さんから電話がかかってきた。
いくつか確認したいことがと言われ、「俺が行く」と樹君が席を立った。もちろん私に「行くよ」と声がかけられる。
白濱副社長が「彼女は置いてけばいいのに」と言ったけど、樹君は冷たく一瞥しただけで、私を連れてさっさとその場を後にした。
食事をするとなった時点で田代さんの待機を解いたため、ホテルの入口近くでタクシーを拾い、吉原さんの事務所に向かう。
事務所につけば、相手を吉原さんに変えてまた話し合いが始まる。
意見を求められ、私も会話に加わり……真剣で熱のこもった時間が過ぎていった。
時刻は午後11時を迎えようとしている。車は交通量の少ない道路を快適に進んでいく。
樹君が気だるげに前髪をかきあげた。
「……さすがに疲れた」
「お疲れ様です」