イジワル副社長と秘密のロマンス
幕間、
中学生の俺
今年はどんな夏になるだろう。
去年の記憶と何ら変わらない駅のホームに降り立てば、徐々に胸が高鳴っていく。
気分が高揚していく。ワクワクしている。ここに来ることを楽しみにしていたことを気付かされる。
思っていた以上に、ね。
+ + +
「暑い」
駅舎から出て、日差しの眩しさに目を細めた。
目を細めたまま駅前の通りを見渡す。今年も、昴さんが迎えに来てくれている予定だ。
「……あっ」
知ってる姿を発見し、声が出た。
「千花」
駅から出て、すぐに出会うとは思っていなかった。
だからびっくりはしたけれど、彼女が一人ではなかったため、俺は名前を呟くだけにとどめた。
千花を取り囲むように、女が二人に男が一人。みんな同い年くらいに見える。
数秒、俺は千花に目を奪われていた。去年よりも格段に、彼女が大人びていたからだ。
小学生から中学生になったばかりの去年の夏は、お互いそこまで変化はなかったけど、中学二年生になった今、一年という月日をしっかりと実感させられてしまった。
久しぶりに会ったし一言くらい声をかけたいけど、変な照れくささもあり、なにより、話してるところに割り込みたいとは思わなかったため、早々に俺は千花から視線を外した。