イジワル副社長と秘密のロマンス

じゃないと、今までの自分に区切りをつけ、新しい一歩を踏み出すことなんてできない。

憧れていた会社に就職してから、ただがむしゃらに、毎日を頑張ってきた。

袴田さんに負けないくらい、私も自分の仕事が好きだし、誇りでもあるけれど……椿から妊娠したと聞いた時、初めて切ない気持ちになってしまった。

誰かを愛し、愛されること。誰かの妻になること。誰かと家庭を築くこと。誰かの子供を身ごもること。母親になること。

彼女の進んでいる道を、自分も歩くことができるのだろうかと……このままではその道に足を踏み入れることすらできないのではないかと、不安になってしまったのだ。

椿には意地を張って、まだまだ結婚なんかしたくないと言ってしまったけど……それは素直な気持ちではない。

置いてきぼりをくらったような寂しさ、それから焦りも感じてしまっている。

私の場合、椿に近づくために、まずは恋愛する相手を見つけなくてはならなくて、新しい恋をするには、樹君のことをしっかりと”過去”にしなくちゃいけない。

だから今日のこの再会は、私にとってチャンスなのだ。