イジワル副社長と秘密のロマンス
「あの……」
連絡先を教えてもらいたいとか、話がしたいとか、その気持ちだけでも今のうちに伝えておこうとしたのだけれど、なかなか言葉にすることができなかった。
気軽に言ってしまえばいいのに、喉に言葉がつかえて出てこない。
「……あの、ね……」
頬が熱くなる。皿を持つ手も震えてしまう。
もう良い大人だっていうのに、緊張で固まってしまった自分が恥ずかしくて、耳まで熱くなっていく。
言葉が続かないのを不思議に思ったのか、樹君が私へと顔を向けた。
「ナンデスカ?」
彼にいかがわしいものでも見ているような顔をされてしまったため、私も眉間にしわが寄っていく。
でもそのおかげで緊張感は緩和された。軽く息をついてから、やっと話し出すことが出来た。
「樹君と話がしたいの……私のために……時間をあけてもらえないかな?」
樹君は驚いたあと、ニヤリと笑った。
自分の気持ちをすべて見透かされたような気持ちにさせられてしまい、頬の熱が復活する。やっぱり恥ずかしい。
「あの……いつでもいいから……私どこにでも行くから……だから、その……」