イジワル副社長と秘密のロマンス
4章、
白濱副社長の乱
多忙な中でも“同棲しようか”という彼からの甘い提案事項はしっかりと進行中である。
新しい物件を探して回る時間がなかなか捻出できないため、私が樹君の家へ引っ越すということで話は決まり、ここ最近、私はその準備に追われている。
同棲を始める記念にと、今夜はお揃いの食器類を買いに行く予定だったのだけれど、物事は予定通りに進んでなどくれなかった。
午後に来社した雑談好きの白濱副社長とのミーティングは予想以上に長引き、そのあと樹君は会長に呼ばれ、社長と共に会長室へ。
しばらく会長室にこもったあと、樹君は会長や社長そして宝さんを含めた四人で外出することとなった。
星森さんと社に残った私は、雑務を終えたら帰宅していいと言われたのだけれど、出かけざま樹君に「できるだけ早く戻るから」と甘く囁きかけられてしまえば、買い物に行けるかもという望みを捨て去ることはできなかった。
結局、家に帰る気持ちになれず、仕事を終えた後、私はこうして街中をうろうろしてしまっている。
寂しさを引きずりながら、お気に入りの雑貨屋を出た瞬間、小さくお腹が鳴った。空腹に負けそうになる。もう家に帰るべきなのかもしれないと考えていると、携帯が振動した。
すぐさま確認する。樹君からの着信についつい口元が綻んでしまった。