イジワル副社長と秘密のロマンス
愉快そうに私を見おろしてくる瞳にどうしても耐えられなくなってしまい、行儀が悪いのは分かっているけれど、私は持っていたお皿で顔を隠しつつ言葉を続けた。
「れっ、連絡先を、教えていただけないでしょうか?」
やっとの思いで言い切ると、ぷっと樹君が笑った。
恥ずかしさを必死でこらえながら頑張って言ったのに、ほんの一瞬で、笑い飛ばされてしまった。
「もうっ! 笑わないでよ!!」
速攻噛みつくと、樹君が笑った。
「かわいいヤツ」
――……優しくほほ笑みかけてきた。
「良いよ。千花のために、俺の予定空けてあげる」
ドキッと鼓動が跳ねた。胸の奥が甘く痺れて、きゅっと苦しくなる。
樹君を、改めてカッコいいと思った。
「そっちの連絡先教えて。都合のいい日を確認してから、こっちから電話するから……って、千花。聞いてる?」
不機嫌な声に、ハッとする。
同時に、彼に見惚れてしまっていたことを気付かされ、私は慌ててお皿で顔を隠した。
これ以上彼と視線を合わせていたら、引き返せない場所に足を踏み入れてしまう。そんな不安にかられてしまった。
「はっ、はい。聞いてます……何でしょう?」
「全く聞いてないじゃん。番号教えてって言ってんの」
「はい。番号ですね。言いますね。080-△□△□……」