イジワル副社長と秘密のロマンス

私は再び歩き出した。



+ + +



店内に入ると、すぐに女性の店員が歩み寄ってきた。


「2名様でよろしいですか?」

「……えっ?」


笑顔での問いかけに、どきりとさせられる。店員が自分の後ろへと視線を向けたため、慌てて背後を確認した。


「はい! ふたりです!」

「しっ、白濱副社長!?」


いつの間にか、後ろに白濱副社長が立っていた。しかもなぜか私への店員の質問に、彼がにこにこしながら答えている。開いた口が塞がらない。

状況が飲み込めずにいる私などお構いなしに、店員と白濱副社長が話を進めていく。


「こちらへどうぞ」

「あ、いえ……あの、私はひとりで」

「いいからいいから。千花ちゃん行くよ」

「ちょっ、ちょっと待ってください! 良くないですっ!」


がちりと手を掴まれてしまえば、もうどうすることもできなかった。私は白濱副社長に窓際の席へと連行される。


「ほら座って座って。何食べる? 俺はそうだなぁ……ピザでも食べようかな。千花ちゃんは何食べる?……うーん、そうだなぁ……」


しかめっ面をして席に着くのを拒んでいたけれど、このままだと白濱副社長が自分のぶんまで料理を頼んでしまいそうな気がして、私はため息とともに席へと腰を下ろした。


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