イジワル副社長と秘密のロマンス

番号を言い並べていると、樹君がお皿の縁に指をかけた。そのまま、お皿を私の顔から遠ざけるようとする。


「皿で顔隠すのやめてくんない? 声がくぐもって、よく聞こえない」

「……でも」

「でもじゃない!」

「あぁっ。これ以上は勘弁してください!」


抵抗を試みたものの、樹君に易々とお皿を取り上げられてしまった。

そして彼はまた私を見て、不敵にほほ笑む。

真っ赤だろう顔を見られたくなくてお皿で顔を隠していたことも見抜かれてしまった気がして、涙が込み上げてきた。


「これでよし……覚えるから、教えて……ねぇ、はやく」


少し目を細め、おねだりするような口調でそう要求され……彼の艶っぽさに、私の思考は完全に一時停止した。

足元がふらついた瞬間、私と樹君の間に、細長い体が強引に割りこんできた。


「ちょっと!」


津口可菜美さんだった。何よりもまず先に、私を睨みつけてくる。


「何なの? 樹とさっきから何してるのよ!?」


突然の乱入に面食らい、そして彼女の敵意に満ちた目に背筋が寒くなっていく。


「ちょっと声かけてもらったくらいで、その気にならないでくれる? 彼の本命は、私だから」

「……本命?」


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