イジワル副社長と秘密のロマンス
「樹が副社長として手掛ける最初の大きなプロジェクトに、私も顔として参加したい。樹の力になりたい。これからも樹と足並みそろえて歩いていきたいの!」
樹君は津口さんから視線を外し、ゆっくりと歩き出す。
「どんな努力も惜しまない、ね……この前の撮影もそうだったと言えるの? プロとして良い仕事ができたと胸を張れる?」
樹君の言葉に、心の中で「確かに」と相槌を打ってしまう。
私も吉原さんの事務所で撮影データを見せてもらったけれど、ウェディングドレス姿の津口さんが男性モデルと寄り添い写っているものは、素人目にもあまりよく思えなかった。
他のウェディングドレスを着たモデルさんたちが同ポーズで写っているものは違う。幸せそうな表情が、ドレスをより一層輝かせているように見えた。
羨ましさも覚え、私もいつかこうなれたらいいなと乙女心をくすぐられたのだが、津口さんだけそう思えなかったのだ。
あの時津口さんは、完全に樹君と並んで撮る気になってしまっていたのかもしれない。
樹君がその気になっていれば、また違う流れが生まれていたかもしれないけど、実際は違う。
AquaNext側が求めていたものを汲み取れず、プロとして全うできなかったということが、結果として残ってしまったのだ。