イジワル副社長と秘密のロマンス
そんなことを思ってしまったけれど、考えすぎだったようだ。
「仕事の電話。でももうこんな時間だし、明日折り返せばいいや」
あっけらかんとした口調で告げられた事実に、ホッとする。
樹君じゃなかったことは良かったけれど、白濱副社長と一緒にいることの後ろめたさは変わらない。心に重く圧し掛かってくる。
「そろそろ帰ろうか」
私にニコリと笑いかけてから、白濱副社長が店員を呼ぶ。テーブル会計を済ませたのち、軽やかな足取りで店を出て行く彼を、私は足早に追いかけた。
「白濱副社長……今日も、ご馳走様でした」
「良いの良いの。とっても楽しく食べられたし、それに、千花ちゃんには良いアイディアをもらってるから」
「アイディア、ですか?」
心当たりが全くなく首を傾げると、白濱副社長がふふふと意味深に笑う。
「本当に、千花ちゃんは藤城弟に愛されてるね。あのぬいぐるみには愛がたくさん詰まってたよ」
通りに出れば、どちらからともなく足が止まる。顔をあげ、白濱副社長と向き合った。
「ねぇねぇ。どんな可愛い魔法を使ったの?」
笑みを浮かべつつも、問いかけてくる瞳は真剣だった。