イジワル副社長と秘密のロマンス
社長にねだられて買いに行くことになった星森さん共々、無事にバケットのサンドイッチを買うことができた。
自分の思惑通りにいくだろうか。これで少しは樹君のご機嫌を直すことが出来るのだろうか。私の話を聞く気にさせられるだろうか。
買ったばかりの紙袋へと視線を落とす。樹君の不機嫌な顔を思い出せば、小さなため息が出てしまった。
白濱副社長と食事をした事や、ぬいぐるみのこと。それらを全部話したら、さらに彼の機嫌を損ねてしまうかもしれないけど、もう白濱副社長とふたりっきりで会いたくないのだから、仕方ない。
樹君の苛立ちをちゃんと受け止めて、私の話を聞いてもらえるように頑張ろう。
両手で抱え持っているパン屋の紙袋をじっと見つめていると、「三枝さん」と小声で呼ばれた。
星森さんに目を向ければ、彼女は少しだけ顔色を悪くさせ、私を見つめていた。
「どうしたの? さっきの人込みで気分悪くなっちゃった? 大丈夫?」
「……そうじゃなくて……三枝さん……あの……私」
星森さんの視線が下がっていく。苦しそうに揺れている。「どうしたの?」と再び問いかけても、彼女は何も言わなかった。
携帯の着信音が鳴り響き、思わずドキリとさせられる。星森さんもそうだったみたいだ。肩を跳ねさせて、ミニトートから携帯を取り出した。
着信を見て、やっと表情が戻ってきた。苦笑いする。