イジワル副社長と秘密のロマンス
「社長です。“無事に買えた? お腹が空いた。早く食べたいなぁ”だって。食べたくて食べたくて仕方がないみたいですね」
「はやく社に戻ろっか」
つられて苦笑すると、星森さんはが「そうだね」と笑う。どちらからともなく足早になっていく。
さっき態度は何だったのか。気にはなるけれど、蒸し返すのも気が引けた。笑みを浮かべ他愛ない話をしながら、小さなわだかまりを心の奥へ押し込んだ。
+ + +
ノックをして副社長に入ると、自分のデスクで何かの資料を読んでいた樹君が顔を上げた。
彼がちらりと私を見た。目が合ったから、話しかけようとしたけれど、声を発する前に視線は彼の手元へと戻って行ってしまった。
拒絶されたような気がして挫けそうになるけど、私は勇気を出して、樹君の元へ歩いていく。
「……樹君。これ」
後ろ手に持っていた紙袋を差し出した途端、樹君が機敏に反応してくれた。椅子から立ちがあり、歩み寄ってくる。微笑を浮かべて、それを受け取ってくれた。
態度が和らいだことにホッとしたのも束の間、樹君は紙袋の中を確認するとすぐに眉を潜めた。ムッとした顔で私を見る。
「なにこれ」