イジワル副社長と秘密のロマンス
態度を急変され、身体が強張ってしまった。両肩に力が入ってしまう。
「……な、なにって……今朝、社長と星森さんが話してたパン屋のバケットのサンドイッチだよ。樹君、食べたいって言ってたから、お昼ご飯にどうかなと思って、買ってきたの」
「あぁ、確かに言ったかも。ありがと」
どうやら自分の言葉を忘れていたようだ。忘れていたということは、実際はそれほど食べたいと思っていなかったのかもしれない。
デスクに置かれてしまった紙袋を見て、がっくりと肩が落ちた。
「これじゃあ、足りないんだけど」
「えっ!? ご、ごめん。もう一度お店行って来る。バケットのサンドイッチ、全種類買ってくるから!」
「全種類とか、いらない」
「じゃあ。好きそうなパンをいくつか」
焦って副社長室を出て行こうとすると、樹君に腕を引かれた。そのまま後ろから抱き締められた。
「俺が言いたいのはそこじゃない……ねぇ、そろそろ気づいてよ。俺、昨日からずっと拗ねてるんだけど」
ふて腐れぎみに、それでいて甘えているようにも聞こえる声で、囁きかけてくる。こんな時なのに、ドキドキしてしまう。
「……気づいてるよ。だって、朝からずっと冷たいもん」
「だったら、もうちょっと考えてよ。俺の機嫌が直りそうなものが何かって……違うよね? 千花が持ってくるべきものは、これじゃない」