イジワル副社長と秘密のロマンス

肩から下げていたAquaNextのショルダーバッグから、津口さんが何かを取り出した。

それに気づいた星森さんが止めに入ろうとしたけれど、強い力で突き飛ばされ、大きく後退させられる。

津口さんは樹君のデスクの前まで進み出ると、バンッと音を立てながら机上に何かを並べ置いていく。

それらは写真だった。

すべてに白濱副社長と自分が写っている。背後に映りこんでいる店にも見覚えがある。昨日、食事をした店だ。

白濱副社長の腕を引っ張っているところ、苛立ちながら向き合い立っているところ、白濱さんの胸を叩いているところ。

そんなシーンがいくつも写し出されている。

昨晩のことを思い出せば、白濱副社長に怒りを感じていたという記憶が私の中に色濃く残っているのだけれど、こうやって切り取ったものを見せられてしまうと、違う風にも見えてきてしまう。

特別な気持ちを持って見つめ合っているようにも、胸をたたいているものはじゃれついているようにも見えてくる。

樹君が写真を手に取った。どきりと鼓動が跳ねる。


「ふうん。なんで電話に出ないのか、折り返しても来ないのかって思ってたけど……なるほどね」


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