イジワル副社長と秘密のロマンス

彼の手の温もりが、肩から離れて行く。指先で弾かれた写真が、絨毯の上にひらり落ちていった。


「そもそも、この写真で俺を丸め込めるとでも本気で思ってたの?」

「……丸め込むもなにも、見たらわかるじゃない! これが動かぬ事実なの!」

「だったら俺に見える事実は、昨晩、千花が怒り狂いながら白濱さんに抗議してたっていうことだけ」


彼の指先が、私の前髪に触れる。優しい指先から心地よさが広がっていく。


「俺、顔見れば分かるから。千花がどんな思いでそこにいたかが」


樹君が笑みを浮かべた。また涙が溢れ出しそうになる。


「さっき俺に言おうとしてたのは、その写真に関係することなんでしょ?」


小さく頷き返すと、樹君が私の手を掴み上げた。


「余計なことなんて考えなくていい。隠さず俺に話してよ。苦しんでるならなおさら」


きゅっと、樹君が手に力を込めた。

手と手は繋がっている。そんな風に彼の気持ちが伝わってきた気がした。堪えていた涙はあっけなく流れ落ちていく。


「……なんでよ」


津口さんの声に、身体がびくりと反応してしまう。苦しみに満ちた声音が、私の意識の中に重く沈み込もうとする。


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