イジワル副社長と秘密のロマンス
「これで千花をおびき出したんだ。やってくれる」
「だって、見た瞬間閃いちゃったんだもん!」
「は? 千花のこと振り回しておいて、なにその態度」
悪びれる様子のない白濱副社長に樹君が詰め寄っていく。
「待って待って待って。もちろん悪かったなって思ってるよ! 無断で持ち出すとかじゃなくて、もっと別の方法もあったかもって、心の底から反省してる」
「言い方が軽すぎて、誤魔化してるようにしか聞こえないんだけど」
「イライラしない! 藤城弟にもプレゼント持ってきたから、これで許して」
もう片方の手提げ袋を差し出され、樹君は嫌そうに身を引いた。
「なにそれ。変なもの入ってないよね」
「入ってない入ってない」
白濱副社長は否定するけど、樹君は疑うことをやめない。もちろん素直に手を差し出そうともしない。
そのやり取りに苦笑いしながら、私は手提げ袋の中からぬいぐるみを取り出した。
黒ネコはあの時同様小太りなままだ。白ウサギと手と手が繋がりあっているところも変わりない。
やっと手元に戻ってきた。二体のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、私はほっと息を吐いた。