イジワル副社長と秘密のロマンス
手の中にある二体のぬいぐるみを見つめながら、頭の中でイメージを膨らませていく。
結婚式に自分たちが身に着けたものを、この子たちが着る。幸せな思い出を可愛らしい形で飾っておけるということだ。
目にするたび、幸せな気持ちになれるかもしれない。私にとっては特別なぬいぐるみでもあるから、なおさらだ。
「乙女心くすぐられた?」
自然と笑みが浮かんでくる。首を縦にふると、白濱副社長が小さくガッツポーズをした。
樹君は黙って企画書を見つめ続けている。白濱副社長は彼からも意見をもらいたいそうな顔をしたけれど、大人しく待つことに決めたらしく、手持ち無沙汰な様子で手に持ち続けていた写真に改めて目を向けた。
「……それにしても。写真撮られてること全然気付かなかったなぁ。可菜美が近くにいたら、ちょっとした騒ぎになるから気づきそうなのに……あぁそっか。誰か雇ったのか……藤城弟への恋心を完全にこじらせちゃって、こんなことまでして」
「あのっ」
白濱副社長の言葉を遮って、星森さんが一歩前へと出た。身体の脇で握りしめた拳が、微かに震えている。
「……その写真を撮ったの、私なんです。ごめんなさい」
その場で頭を下げてから、星森さんは私の方へと向きを変え、もう一度「ごめんなさい」と深く頭を下げた。