イジワル副社長と秘密のロマンス
突然の告白に驚きながらも、パン屋の帰りに見せられた星森さんの表情を思い出す。
もしかしたらあの時彼女は、このことを私に言おうとしていたのかもしれない。
「津口と共謀してたってこと?」
企画書から顔を上げた樹君が、呆れた様子で問いかける。表情を強張らせたまま、星森さんは小さく頷いた。
「副社長と三枝さんの仲を引き裂きくために、手を貸してと言われました。もちろん最初は断りました。でも私も心の奥では、副社長のことを諦めきれていなくて、大切にされてる三枝さんのことをずっと羨ましく思っていたから……だんだん自分の気持ちが抑えられなくなってきてしまって。こんなことしちゃいけないって分かってるのに……ごめんなさい」
星森さんは樹君のため息にビクリと身体を竦めてから、もう一度頭を下げてきた。
私が樹君と付き合っていると知った時から、きっと星森さんは彼を忘れようと必死に努力してくれたのだと思う。
それを思うと胸が苦しくなる。深く頭を下げているその姿にも、いたたまれなくなってくる。
「……星森さん」
思わず呼びかけていた。
それに反応し顔を上げてくれたけれど、なんと言葉を続ければ良いのかは分からなかった。