イジワル副社長と秘密のロマンス
非難するつもりなどない。津口さんを必死に止めようとしていた姿は見ているし、なにより、パン屋の帰りに見た表情は後悔という言葉で表現するのが一番近いと思えた。
言葉の代わりに苦笑いをすると、星森さんもほんの少し表情を和らげた。
「まったく、藤城弟はとんでもなく罪作りな男だなぁ。一緒にいると、俺、霞んじゃう」
白濱副社長のぼやきに、樹君は意味が分からないと言った顔をする。
「それ俺のせい? 発言も見た目も言動も軽いのがいけないんじゃないの?」
「あっほら。俺の気持ちも考えずに、こんなことを言う。早く忘れちゃいなよ。良いことないよ?」
話しかけられ星森さんが困り顔をする。白濱副社長はそんな彼女を見て何か閃いたらしく、ぽんと手を打った。
「あっそうだ。心の痛みは俺が癒やしてあげるから、俺の胸に飛び込んできちゃいなよ!」
促すように両手を広げられ、星森さんは唖然としながら、大きく一歩後退する。
場の緊張感が白濱副社長のマイペースさで、少しずつ緩和されていく。
「言ったそばから。口説きたいなら後にして。星森さん、社長呼んできてくれる?」