イジワル副社長と秘密のロマンス
不機嫌に問いかけると、彼女がすぐに言い返してきた。そしてハッとした顔をしたのち、恥ずかしそうに俯いてしまう。今の言葉は本音で間違いなさそうだ。
少し力を込めて、彼女の手を引き寄せた。千花の足が一歩、二歩、俺に近づいてくる。
「だったら。俺を恋人にして」
彼女の澄んだ瞳をのぞき込み、俺は願いを込めて訴えかけた。あまりしたことのない緊張に襲われる。
「……うん」
身を硬くしながら返事を待ち、やっと頷いてくれたことで一気に嬉しさが込み上げてくる。いつもの自分では考えられない感情の変化に、笑ってしまう。やっぱり千花は特別だ。
「夏休みの間、どうぞよろしく」
「うん。よろしく、ね」
手を繋いだまま、俺たちは歩き出した。
横目でちらりと千花を見ると、彼女はまだ顔を赤くさせたまま俯いている。
けれど口元はほほ笑んでいた。その横顔がとても綺麗で、それでいて少し艶っぽくて、どきりとさせられる。
「そうだ。一応聞いとくけど、どこまであり?」
「どこまでって?」
「キスしても、許してもらえる?」
「…………えぇえっ!?」
千花の大声に、前を歩いていたユメが勢いよく振り返った。