イジワル副社長と秘密のロマンス
祖母はその女性と積もる話があるらしい。俺たち兄弟の挨拶が済むと、宝さんと共に本日の宿泊先であるホテルへ行くよう命じられてしまった。
このホテルは、祖母のお気に入りのバーが入っているホテルである。
昴じいさんの家が近いため、出来ればそっちに泊めてもらいたかったけれど、間が悪いことに、牧田夫妻は旅行に出かけてしまっていた。
「あっ。そうだ! 夕食食べたら、翼さんの部屋に集まって、何かゲームでもしようよ」
「はぁっ!?」
「ホテルの近くにおもちゃ屋の入ったショッピングモールあったよね……カードゲームぐらい売ってるだろうし、食べたら買いに行ってこようっと」
「そのまま帰って来なくて良いから」
兄の部屋に集まってゲーム。何が楽しくてそんなことをしなきゃいけないのだろうか。
それだったら、例え薄暗闇の中だったとしても、思い出の場所をひとり歩いた方が、何倍も有意義である。
「レストラン、こっちかな」
すっかりその気になってしまった津口はあっという間に階段を上っていく。足取り重く、俺も階段をのぼり始める。
兄さんの顔を思い浮かべれば、また一段と気が重くなる。