イジワル副社長と秘密のロマンス
申し訳なさでいっぱいになりつつも、樹君の眼差しから気遣いや優しさを感じ取ってしまえば、自然と涙が込み上げてきた。
静かに話していると、白濱さんが室内に入ってきた。社長室で話をするために、樹君を呼びにきたらしい。
企画書に書かれていたことについて、その場でいくつか話しをしたあと、白濱さんが笑顔で言った。
「ウサギの方は可愛らしくてそのままでもいけるけど、ネコほうは変更ね。ぱっと見、なんの動物なのか迷うから」と。
私はまたしても衝撃の渦に飲み込まれていった。
「余計なこと考えてる?」
ぽんと頭の上に温かな手が乗せられ、私はハッとさせられる。いつの間にか後ろに樹君が立っていた。
「今日はいろいろと衝撃だったから」
「確かに。でも津口は結構したたかだから、うちと仕事ができなくなってもすぐに次を見つけるだろうし。あの鬼みたいなキャラでいけば、別方面で活躍する日もくるかもね」
樹君は私の隣に腰かけて、手提げ袋の中から黒ネコを取り出した。脇腹から背中にかけて布が裂け、中の綿が飛び出してしまったため、しぼんでしまったようにも見える。
「早く元に戻してあげたい」