イジワル副社長と秘密のロマンス


「そう言えば樹君、今日は仕事だったの?」


先ほど見た男性二人を頭に思い浮かべた。二人は樹君と同じようにスーツを身に着けていた。それが私には仕事帰りのように見えてならなかったのだ。


「そう。いくつか回らないといけないところがあって」


私の予想は当たりだった。今日は祝日だけど、樹君は仕事だったようだ。

とは言え、今回は前もって申請しておいたから休めたけれど、私も土日祝日はほとんど仕事である。

そう考えれば、樹君は今どんな職に就いているのかという興味が湧いてくる。


「ってことは、一緒にいた人たちはみんな仕事仲間?」

「みんなじゃない。男だけ」


津口可菜美が仕事仲間だというのなら、樹君も芸能関係の仕事をしているのかもと考え聞いてみたのだけれど、そこはあっさり否定されてしまった。

眼鏡の男性は人が良さそうだったし、年配の男性は紳士的な雰囲気だったし、樹君は……こんな感じである。

三人を頭の中で並べてみる。いったいどんな会社で働いているのかが、まったく想像できない。

横を歩く樹君をちらちら見ながら頭を捻っていたため、注意力が散漫になってしまっていたらしい。


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