イジワル副社長と秘密のロマンス

数分前の光景を思い出し、うんざりしながらため息をつくと、椿が私の意見に同意するように頷いた。


「老舗和菓子店の跡取り息子っていうのは袴田さんにとっての最強の武器だろうし、そこでアピールしてくるのは仕方ないんじゃない? もしかしたら実際今までにも、玉の輿だって目を輝かせて飛びついてきた女性もいたかもしれないし」


私も、椿の言葉に頷き返していた。

自慢の裏で次期社長という身分をちらつかせ、俺のところに嫁に来れたら幸せだろうっていう考えが、言葉の端々に透けて見えたのだ。

やっぱりそう思っていたのは自分だけではなかったようだ。


「でもその手は千花に効かないよね。そういうタイプじゃないし。今回は袴田さんの作戦失敗ってとこかな……まぁ、アプローチの仕方はどうかなって思うけど、袴田さんが千花にぶつけてる気持ちは本物だと思うよ」


腕を組み、大理石の床へと視線を落としていたけれど、突然そんなことを言われ、私は勢いよく顔を上げた。

椿が真剣な顔で自分を見つめていたため、口元に歪な笑みが浮かび上がってくる。


「そっ、そう、でしょうか?」

「余計なお世話だとは思ったんだけど。今朝、袴田さんに聞いたんだ。千花のどこが好きなのって?」

「そんなこと聞いたの?」


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