イジワル副社長と秘密のロマンス
仕事を終えてからメールをすると、そのあと夜遅くに、樹君からメールが返ってきたり、時間によっては電話がかかってきたりする。
声や文字だけではあるけれど、私たちの関係は途切れることなくしっかり続いている。
夜遅くでも会社にいたり、話している途中でも仕事の電話がかかってきたりと、電話越しでも、彼の仕事が多忙を極めているだろうことは伝わってくる。
そんな中でも、樹君は私のことをおざなりにはせず、ちゃんと気にかけてくれているのだ。
大切にしてくれているのがちゃんと伝わってくるから、心はすっかり満たされていた。
……けれど、それが一か月も経つと、だんだんと彼の顔が見たくなってくる。
単純に彼に会いたいというのはもちろんだけれど、この前のバーでは流されるまま帰宅の途についてしまったので、彼にご馳走してもらった形になってしまっている。
今度は私が食事をご馳走したりとか、または何かプレゼントするとか、直接会って私も彼に何かをしたいのだ。
そろそろ会いたいって、言ってみようかな。
そんなことを考えながら店の中に戻ると、店長に「三枝さん」と名を呼ばれた。
ショートボブの女性店長が、私に向かって手招きしてから、スタッフルームへと入って行った。