イジワル副社長と秘密のロマンス
「いろいろ不安ですけど……有難うございます! 頑張ります!」
私は店長の手をきゅっと握りしめながら、大きな声でそう返事をした。
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正式に告知を受けてから、後輩に引継ぎをしたり、贔屓にして下さっていたお客様へ異動の挨拶を葉書きにしたためたりと忙しい一週間を送り、そして週が明け、私は本社の初出社日を迎えた。
曇り空の下、街路樹の木々が風にあおられ揺れ動いている。
緊張と共に本社に向かって通りを歩いていると、バッグの中に入っていた携帯が振動した。
『今日から本社勤務だよね! 頑張ってね。落ち着いたら絶対連絡してよ! 東京まで例の彼氏見に行くから』
椿から送られてきたメールに、口元がほころんだ。
本社への異動が決まったその日の夜、椿から電話があった。
私は椿に、袴田さんとはレストランで別れたことくらいしかメールで伝えていなかったのだけれど、孝介先輩が仕事で袴田さんと会う機会があったらしく、その時に私の文句をぶつけられたらしいのだ。
それを孝介先輩から聞いた椿が心配し、慌てて私に電話をしてきた。
私は隠すことなく、あの日あったことを椿に話した。