イジワル副社長と秘密のロマンス

袴田さんと言い合ってしまったことや、できればもう会いたくないということ。

ずっと気にしていた元カレと再会し、付き合うことになったことも話した。

最初に椿から袴田さんのことで謝られ、樹君との偶然の再会にとっても驚かれ、そして、おめでとうと自分のことのように喜んでくれた。

会いに行く、彼氏の顔を見てみたいと繰り返し言うので、実は自分に異動の内示が出ているという話もして、仕事が落ち着いたころに会おうと約束をした。

樹くんとは、食事に行こうという誘いのメールをもらい、時間差で日時と待ち合わせ場所と時間を決めるやりとりを交わしてから、数日連絡が途絶えてしまっている。

私もばたばたしていて疲れていたし、きっと樹くんも忙しいのだろう。

異動の話もしそびれてしまっているし、椿のことも含めて、会った時に直接顔を見て話せばいいかなという気持ちになってしまっていた。

本社の前に到着する。

8階建てのビルを見上げれば、不安と緊張が一気に湧き上がってくる。

わずかに身を震わせながら、私は唇を引き結んだ。


「初日、頑張るぞ!」


両の拳をぎゅっと握りしめてから、私は大きく一歩を踏み出した。

ビルの地下1階、それから地上1、2階には店舗やクリニックが入っている。

建物の横にある細い路地を奥へと進めば、歩道沿いにあるビルの出入り口とは別に、もう一つビルの入口が現れる。


< 76 / 371 >

この作品をシェア

pagetop