イジワル副社長と秘密のロマンス

そこからビルの中へと足を踏み入れれば、エレベーターの前に同年齢くらいの女性が一人立っていた。エレベーターが降りてくるのを待っているようだった。

私も彼女の斜め後ろまで進み、足を止めた。自分と同じようにグレー系のスーツに身を包み、髪を後ろで束ねているのを見て、なんとなく親近感がわいてしまう。

到着したエレベーターに乗り込み6階のボタンを押すと、先に乗り込んだ彼女が「あっ」と小さな声を上げた。


「もしかして、AquaNextの方ですか?」


続けて、弾んだ声でそんなことを問いかけられた。

このビルの3階以上はオフィスが入っている。

3階から5階には様々な業種の会社がいくつも入っているけれど、6階より上はAquaNextだ。

私は彼女と向き合い、笑みを返した。


「はい。そうです……あっ、何階ですか?」


上昇し始めてしまったため慌てて行き先の階を聞くと、女性はにこにこ顔のまま首を横にふった。


「私も6階です! 今日から本社勤務なんです! 星森亜紀(ほしむらあき)と言います。これからよろしくお願いいたします!」


勢いよく頭を下げられてしまい、私は慌てて両手を振って否定した。


< 77 / 371 >

この作品をシェア

pagetop