イジワル副社長と秘密のロマンス


「疲れた……よね?」


声を掛けると、星森さんがこちらに顔を向け、苦笑いをした。


「ずっと緊張してたから、疲れたかも」


自分と違い、星森さんが緊張しているようにはあまり見えなかったので、ちょっぴり驚いてしまう。


「私もだよ。たぶん家に帰ってから、ぐったりすると思う」


自嘲気味に笑いかけてから、私は自分の手元に視線を落とす。作業を再開する。社長あての封筒を手に取った。

今は宝さんと離れ、事務的な作業をこなしているだけだけど、場所が慣れないからか、私はまだちょっと緊張感を引きずっている。

けど、嫌じゃない。久しぶりの心地いい緊張感だ。


「頑張って早く慣れなきゃだし、もう少しいろいろ勉強もしないとなぁ」


ぽつりと呟かれた星森さんの言葉に、「確かに」と囁き返す。

この前、本屋で秘書に関する本を三冊ほど買い、まだ一冊目の途中までしか読み進めていない。

秘書検定を受けるべく買ったテキストがまだ実家に残っているはずだ。

それらを自宅に送ってもらい、おさらいする気持ちで取り組んでみても良いかもしれない。

少し余裕が出てきたら、準1級、1級と、合格目指して頑張ってみようかな。


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