イジワル副社長と秘密のロマンス
想像を膨らませながら樹君の彼女の有無を気にしている星森さんの傍らで、私は気まずさで固まってしまう。
作業に集中するべく、気持ちを切り替えようとした時、がちゃりとドアが開いた。
「お疲れ様です」
宝さんが優雅な足取りで室内に入ってくる。助かったと思いながら、私は元気よく「お疲れ様です!」と言葉を返した。
進捗状況を確認しながら、宝さんが私たちの後ろを行ったり来たりした後、次の指示を出す。
「どちらか一人で配達物のチェックをお願いします。配達物を分類できましたらそれぞれに届けて下さい。もう一人は、会議室の片づけを。各自終わりましたら、私の所に来てください。確認し仕事がなさそうでしたら、今日の業務は終わりとなります」
星森さんが手元の封筒たちに視線を落とし、そしてちらちらと訴えかけるように私を見つめてきた。
配達物は社長宛ての物が主だけれど、藤城兄弟の分もいくつか混ざっている。
さっきまであんなに気になると騒いでいたのだ。
彼女は片付けよりも、このまま配達物のチェックを続けたいのだろう。
樹君に渡しに行った時、気になっていることをいろいろ聞き出したいとか、そんなことを考えているのかもしれない。