イジワル副社長と秘密のロマンス
自分に向けられる彼女の視線の意味をそんな風に読みとり、私はゆっくりと椅子から立ち上がった。
「私、会議室の片付けに行きます。これも一緒にお願いします」
まだ未開封の物を手に取り、星村さんの元へと進んでいけば、彼女はさらに瞳を輝かせ、にっこりと笑った。私の考えは当たりだったようだ。
まずは未開封のもの、それから重要だと思うもの、最後にダイレクトメールなどを順番に手渡してから、「行ってきます」の一言と、樹君の彼女としての複雑な気持ちをその場に残して、私は部屋を出た。
エレベーターを使い6階から7階へあがる。
7階には会議室が4部屋と、打ち合わせなどができるように丸テーブルやいすが置かれたスペースがある。
今日の午後の会議は、4部屋の中で一番広い会議室Aで行われた。打ち合わせエリアを抜けてすぐの場所にその部屋はある。
進んでいくと、開かれていたドアから次期社長が出てきた。私はすぐに頭を下げる。
「お疲れ様です」
「ありがとう」
通りすぎていくだろうと思って、そのまま頭を下げていたけれど、視界に入りこんだ革靴のつま先が、ぴたりと停止した。動かない。
目の前で足を止められ、ぎこちなく顔をあげると、次期社長がニコリと笑いかけてきた。
「三枝さんだったよね」
「はい」
「お疲れ様。初日、どうだった? これから何度も大変な時があると思うけど、挫けず頑張ってください」
「有難うございます。頑張ります!」