イジワル副社長と秘密のロマンス
「いっ、樹君は休憩中だとしても、私は仕事中です!」
「千花は気にしないでそのまま片付けしてて。俺も気にせず休憩するから」
「こっ、この体勢だと、動けませんっ! 離れてくださいっ!」
強引に樹君の腕を払いのけると、背後で「ちぇっ」と樹君が呟いた。
「っつーか、すごいびっくりしたんだけど。本社に異動するって、一言教えてくれても良かったのに」
肩越しに後ろを見る。樹君が椅子を引きよせて、背もたれを前にして座り、拗ねているような顔で私を見上げてきた。ちょっぴり可愛い。
「今度会うから、その時言えばいいかなって思ってたの、ごめんね……って、教えてくれても良かったのには私のセリフだからね。私は樹君以上に驚いてるんだからね」
「だってあの時、千花が言ってたじゃん。副社長って言葉もう聞きたくなって」
うっと声が詰まった。確かにあの時、袴田さんのことで副社長がなんたらと文句を言っていた気がする。
「どのタイミングで言おうか考えてたのに、言う前にバレた……でもまぁ、千花の魂抜けたような顔が見れたから良いや。けっこう満足」
「それはよろしゅうございましたね」