Forecast -Mystic Cafeへようこそ-
私立音夢学園中等部。
高等部から歩いて2、3分で簡単に着くその場所は
夕方になると人も少なくなり
生徒の笑い声や雑音が瞬く間に減っていく。
というか同じ敷地内だから簡単に
行けるのは当たり前だろう。
実は既に校舎自体は廃校となっており
中等部は小学校の付近に移動しただけで
この校舎も来年取り壊しが
決まっている。

何故ここに来たのか、というと
もうそれは本当数分前のこと。

「肝試ししようか?」

と早紀が言いだし提案してきたのが
ここだったわけだ。

なんでも早紀の妹のクラスで話題の
『さとりちゃん』を
やりたい!だとか。

ご丁寧にやり方の載っているメモまで
所持していたようだから
拒否権は初めから殆どなかったわけで
ここまで三人(と何故かおかっぱ幽霊女児一名)で
突撃しに来たのである。

さとりちゃんとは、ここ音夢中の七不思議として
知れ渡るお話だ。

といっても実は最近流れた噂、というか
最近になって浮き彫りになって
出てきた怪談である。

場所は1年5組。
決まった時間に現れる。
大人がいると見つからない。
子どもだけでしか見つけられない。

さとりちゃんの呼び方は簡単。
とある番号に電話をする。
繋がったら5秒無言に耐える。そして

さとりちゃん、さとりちゃん
いつものところで、待ってます
秘密を教えてくれますか?

と呪文を言う。これだけである。
勿論、悪戯に別の場所からかけたりする子も
いるけれど、それをすると呪われると
言われてるから、やる人は滅多にいないみたい。

けれど過去に別の場所でやって
次の日見知らぬ女の子に水をかけられて
全員風邪をひいたとか

またあるときは
表は告白された文章、
裏は貴方は数分後、これを見た人に
ラブレターを貰った人と勘違いされるでしょう 様編みなさい。と書かれた予言のような紙を
靴箱に入れられる。
女の子の顔を見た人はいないから
大人も対処のしようがないみたい。

それに運悪く近くにいた友人がその紙を
取り上げられたりなんかしたら
かなり恥ずかしい。嘘でもラブレターでしょ?
反応しないほうが無理じゃない。

だからさとりちゃんを呼び出すルールを
破らないよう私達はここに赴いたのだ。
面倒だけど。


「じゃあ、やるよ」

早紀は楽しげに教室に入り教卓にメモを広げ
私たちはそれを囲むように読み上げる。

電話をかけると静かな教室に
着信音が響く。
スピーカーモードにしてあるから
皆に聞こえないというトラブルも
恐らくないだろう。5秒その場待機し
呪文を全員で唱える。


さとりちゃん、さとりちゃん
いつものところで、待ってます
秘密を教えてくれますか?
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